生きるのが辛かったコミュ障の成長マンガ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」が優良純文学だった件

「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」を読破しました

お疲れ様です、pontaです。

「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」(スクウェアエニックス,谷川ニコ) を全巻大人買いし、読みふけりました。

最新話はWEB上で無料で読めるので、ちょこちょこ見てはいたのですが、見逃していた回もあったのでお布施も兼ねてガッツリ購入。
通して読んで改めて思うところあり、レビューを書くなり。

もともとこのマンガがブームになったのは7,8年くらい前でした。非モテで非リアなJKの、自意識過剰で孤独な毎日を描いたこの作品。

野球部憎し、休み時間は机で寝たふり、2人一組のときは確実にあぶれ、垢ぬけた女子をビッチ呼ばわりなどなど。

いわば非リアの「あるあるマンガ」であり、ネットやTwitterのネガ面を煮詰めたようなストーリーに、コミュ症を辞任する陰キャの読者たちは熱狂しました。

ふつう、こういうマンガは人気が出たら作者の交友範囲も広がって、逆に非リアを見下すというか同族嫌悪に走ることが多いんですが、そこはブレずに、いついつまでも、いつまでも、主役のもこっちは暗く、卑屈に、独りよがりな学生生活を送っていきます。

まあ、このままでいったとて名作足りえたと思うんですが、8巻の修学旅行編あたりから様子が変わりだします。

ヤンキーの吉田やマイペースな田村などクラスの余りものと同じ班にさせられたことにより強制的に他者とのつながりを持たざるを得なくなります。

それからなんやかんやあって、その修学旅行メンバーと日常でも会話するようになり、マンガはもこっちをめぐるJK群像劇の様相を呈してきます。

この辺の、「もこっちと周囲の距離感の詰め方の描写」が絶妙で、「生きているのが辛かったコミュ障がなんとなく周りにとけこんできて生きるのも悪くないなと思いなおす」感じが数多い文学、マンガの中でも出色です。

どうなんですかね。もしこれがもともと「孤独な女子高生がだんだん他人との繋がりを獲得してくキラキラストーリー」なるテロップのもと描かれた話であれば、どっかご都合主義のにおいがしたと思うんですよね。

たぶん作者は、そういう話にするつもりはなかった。主人公の孤独エピソードの延長で、修学旅行の話を描いたら、自然とそうなっていった感があります。それがいい。

そして主人公のもこっちは、実はすごく魅力があるんですよね。なんていうか、不器用ですが人間の暗さや弱さが丸出しで。

その自分の弱さと必死に戦っていて、どうにか克己しようとしている。そしてとんでもない毒舌も含め、目が離せない華がある。

うわっつらだけの仲良しグループを作っているJkたちが、もこっちに惹かれていくのも納得できます。

自分の学生時代を振り返ると、別にまあ、友達がいないわけじゃなかったです。ただ、そんな中で、「グループの雰囲気」に合わせるために、無理をした瞬間がなきにしもあらず。

友達が多ければ多いで別の苦労がある。そして大勢の中で感じる孤独は独りぼっちのときに感じる孤独より深い。

そんな誰もが心の中に「もこっち」を飼っている中で、彼女が周囲に受け入れられていくのを見るのは、自分自身が周りに温かく迎え入れられたような浄化感があるんですよね。

心と心の距離感を測るのが文系であり、その極地が文学とするならわたモテはまさに文学。

ギャグマンガとしての質はそのままに、良質な純文学のような輝きを増してきた「わたモテ」。Amazonレビュー、303件、驚異の☆5率は伊達じゃなかったです。

以上、よろしくお願いします。