通説がつねに変わっていくことを知れる一冊 ―すずき孔著『マンガで読む 新研究 織田信長』(2018 戎光祥出版)

今日のオススメは、信長のマンガ

お疲れ様です、pontaです。

ライターやってると、「おすすめの本は?」とたまに聞かれます。
難しいですよねえ。大学のとき、付き合ってた彼女に『星の王子さま』をプレゼントしたら「いやいやいやw」と言われてからトラウマです。

女性へのプレゼントは宝石類。それか花。色恋が絡まないなら商品券が鉄板です。童貞諸君は肝に銘じてください。

さて、そんな私の最近のおすすめの本は『マンガで読む 新研究 織田信長』です。

「えー、マンガ?」と思うなかれ。これがバカにしたもんじゃない。っていうか良書オブ良書です。

織田信長と聞いて、みなさんはどういうイメージが浮かびますか?

革命児とか、破壊者とか、創造主とか、残酷、現代的感覚を持った天才といった像が浮かんでくるかと思います。

『西洋の鎧に身を包んだ濃い顔のイケメン』というのが、ドラマやゲームでおなじみの姿ですよね。

ですが最近の研究では、この信長像は否定されはじめています。

信長は実は保守的で身内に甘く、他人に騙されやすい田舎大名だった…らしいんですね。

たとえば『天下布武』という彼の印章も従来は『武力で天下統一するという信長の意志の表れ』と言われてきました。

しかし最新の研究では『関西に足利幕府の勢威を取り戻す』程度の意味だったとのこと。

それはそうですよね。武力でお前の領地を征服するぞっていう意味だったら、どんだけケンカ売ってんだよって話ですから。

ほかにも、ドラマではおなじみの各シーンが最新の研究では否定されていることが本書で説明されています。

『桶狭間は奇襲ではなく正攻法だった』

『信長の革新的な経済政策だと思われている楽市楽座は、どの大名もみんなやっていた』

『浅井氏と朝倉氏は別に仲良くなかった』

『朝廷と足利家を重んじた』

信長はドラマでおなじみの、神がかった、クールな、革命的天才ではなかった。

信長は保守的で頑固で欠点だらけの愛知の田舎大名だった…と言っては言い過ぎですけど、そういう姿が明らかになってきているようです。

研究は進んで、真の姿が明らかになってきたけれど

では本書で信長の魅力が否定されたかというと、まったくそんなことはないんですよね。

ドラマで作り上げられた虚像を取り去ることで、かえってより等身大の、魅力的な、長所と短所が表裏一体な信長像が浮き彫りにされています。

司馬遼太郎がみごとなキャラクター造形をなしとげた、土方歳三や坂本龍馬は、1000年後、その名前が残っているかは微妙ですけど。

信長の成し遂げた事績は1000年後も残っているに違いないでしょう。

私がこの本を若い方におすすめする理由は、『歴史は生きている』ってことですかね。

んー。子供のころに図鑑に書いてあったことはすぐ嘘になる。最新の研究ですぐ塗り替えられる。

恐竜の姿とか、ネアンデルタール人の現生人類との混血とかもそうですね。

旧来の常識が新しい科学によって塗り替えられるときくらい、知的興奮が掻き立てられることはありません。

この本に書かれている信長像も、ひょっとしたら10年後にはまったく塗り替えられているかもしれません。

歴史はつまらないかび臭い学問じゃない。常に生きている。

そして常識を疑い、通説を批判的に見ることの大事さは、この本を読むことで、若い人もなんとなく感じると思うんです。

その考え方は、別に学問をしなくてもきっと生きていくうえですごく大事なことだと思うんですよね。

そんな思いをむねに、今日も僕は信長が革新的なキャラ付けをされまくった信長の野望をやりたいと思います。

信長「我、新しき世を作る…。そのためには破壊などいとわぬ!!!」

以前はかっこよく思えた信長の野望のセリフが急に嘘くさく…。

以上、よろしくお願いします。